何が正解になるかわからないから面白い〜日本沈没 第二部(下)を読んで


こんにちは。みゆきです。

今日は前回の上巻に引き続き、日本沈没第二部(下)についての感想です。

<あらすじ>

日本のメガフロート計画や地球シュミレーションをきっかけに、各国の思惑が表面化する。

日本の領有権を認めずに沿岸国との共有権という建前で、日本の領海を掌中に収めたい中国。

寒冷化の情報を独占するために日本をスケープゴートに仕立て上げ、自国の生存を確実なものにしようと試みる米国。

四面楚歌の日本。

中田首相とは全く異なる生存戦略を提言する鳥飼外務大臣。

妙な連携プレーで意図的に情報を漏洩させた篠原を始めとする研究所のメンバー。

日本、そして地球の姿はどのように変わっていくのか。

<心に残ったポイント3つ>

①研究所メンバーの地味だけどド派手な反撃

当初は地球シュミレーションを全世界に開示するまでに、寒冷化による地球規模の災害を食い止めるべく提言をまとめようと奮闘する研究所のメンバーたちに、日本人の持ち味とも言える粘り強さや緻密さを感じて心が打たれました。

レポートは完成したにもかかわらず日の目を見ずに、プロジェクトも白紙になってしまう場面はこちらも無念な気持ちになりました。

そんないまいち報われない研究所メンバーたちが、日本を救う一手を投じる場面はとてもドキドキしました。

終盤でなかなか嫌みな矢内というリーダーが登場しますが、私の想像ではこの人物も情報漏洩に一枚噛んでいるように見えました。

いじわるそうに異動を命じる場面がありますが、篠原が外部に情報を持ち出すには絶対になくてはならないピースです。

そして、荻原もロボットのような一面が見受けられますが、余計な情報を与えないことで篠原を守っているように思えました。

篠原以外の矢内や荻原といった登場人物は、何を考えているのかよくわからない、ある意味ポーカーフェイスな人間に思えましたが、内心はなにか熱いものを持った人間なのではないかと思います。

篠原にデータを託す場面は胸が熱くなりますし、その後の某国の言い訳にも取れるような場面は痛快でした。

②鳥飼内閣の新しい提言

鳥飼外務大臣のちに首相の提言は、ユダヤ人の生存戦略を参考にした日本の国際化、日本人の現地化で、中田首相が目指していた領土の再生による日本の復活とはかけ離れたものでした。

上巻の登場人物の「日本人をユダヤ人にしてはいけない」との発言がありましたが、それとの対比も印象的でした。

日本を救う、日本人を助けるという思いはみんな一緒なのに、置かれている環境やその時の情勢、過ごしてきた人生などで、こんなにも多様な考え方が存在することに感服しました。

中田首相と鳥飼の対比、上巻と下巻の対比。その基軸となる鳥飼の提言はとても心に残りました。

どの考えも間違っているわけではなく、状況にフィットしているかそうでないかの違いなだけ。下巻では特にそのように思える場面が複数ありましたが、鳥飼の提言はその中でも代表的なものに思えます。

③数世紀後の地球の姿

数世紀を経た地球の姿は、多数のメガフロートが存在していたり、宇宙へ移住するものが

います。

北半球は氷に覆われ、南半球は開発が進んでいます。

摩擦の要因になったメガフロートや、日本人非難の一因でもあった環境開発が是とされている未来の姿に、長期的に見れば物事の見方に絶対的な善悪は存在しないように思えました。

時間の他にも、生まれ育った環境の違いでも物事の捉え方は変わってくるだろうし、自分の考えがいつも必ず正義であることなんてないのだと思います。

未来に吉と出るのが、自分の思ってもいない形であることはむしろ当たり前で、わからないことを楽しめたほうが人生楽しそうだなと終章を読みながら考えました。

<おわりに>

たくさんの登場人物たちの目線で描かれた物語が一気に繋がっていく後半は、特に面白くて一気読みしました。

日本人はもちろん、地球上の人間がたくましく生きている最後の光景に希望を感じた1冊でした。


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