こんにちは。みゆきです。
今日はFさんの「真夜中乙女戦争」を読んだ感想です。
<あらすじ>
大学に入学した主人公は、怒っている。
世間や周りの人が、自分を楽しませてくれない、期待通りにいかないからだ。
一言で言うと、中二病の18歳もしくは19歳。
散々ひねくれながら、大学生活を過ごしている。
ある日、喫煙所で黒服の学生から話しかけられる。
ひょんなことから、そのまま二人で盗んだバイクで逃走。
それをきっかけに急速に仲良くなり、一緒に映画館を作るまでになる。
そこへ出入りする常連も増え、やがて彼らは社会を破壊する「真夜中Z女戦争」を始めていく。
<心に残ったポイント3つ>
①自分の心には素直にひねくれ続ける主人公
世の中に勝手に期待して、勝手に裏切られ、どんどんひねくれていく主人公ですが、そのひねくれている自分を臆することなく表に晒せるのはすごいなと思いました。
大学生にもなれば、ちょっとは人の目が気になるものですし、この主人公は特に承認欲求が高いように思えました。まぁ、この承認欲求もひねくれているのですが。
それなのに、自分の思考については一切の迷いがない。だからこそ、あんなに素直にひねくれられる。
清々しく「自分は正しい。世の中が間違っている。」を掲げられる主人公の素直さ、無邪気さには尊敬の念を抱きます。
自分が思っていることは、きれいに言語化できているのに、考えていることが偏屈。
あぁ、なんて惜しい。
多くの人間は自分が何を考えているのかについて、それほど敏感に理解できていないのではないでしょうか。
主人公のように、こんなにも自分の考えを理解するスキルがあれば、いくらでも自分が欲しい未来に向かって生きていけそうですが、実に惜しい人材です。
②佐藤のポテンシャル
主人公の高校からの同級生の佐藤。
ちなみにこの物語において、名字だけでも名前が出てくる登場人物は稀です。
彼以外だと、黒服の名字が一瞬出てくるくらいだったと思います。
この佐藤のことを主人公は嫌っているというか、下に見ている感じがします。
この佐藤も自分が欲しているものには素直ですが、主人公と違って陽キャです。
自ら動いて、入りたいサークルに入り、たくさんの友人や知り合いを作り、やりたいバイトに応募したり、大学生活を謳歌しています。
他にも、入りたい会社のインターンを決めてきたりと、将来のことを考えてどんどん動いていく姿はとてもすごいと思います。
結果につながる努力をコツコツと続けられるところや、途中で主人公に全否定をされるのですが、それを一度ちゃんと受け止めるところは感服しました。
それだけに、主人公の力で人生をめちゃめちゃにされたシーンはちょっと怒りがわきました。
誰かが自分で勝ち取ってきたものを他人にぐちゃぐちゃにする権利はないのに。
とても悲しい場面でした。
③鬼畜な戦争ミッション
ついに始まった「戦争」ですが、最初は小さな嫌がらせから始まります。
やがて爆破などにも進んでいくのですが、地味で小さい嫌がらせだからこそ、自分の身に置き換えて想像することが簡単なので、より酷さを感じられます。
大学での試験の妨害や、なりすましSNSで炎上投稿をして内定を取り消しさせたり、学長の名前でサークルの解散命令を出したり、他人の名前でラブレターを出したり。
死人は出ていないけど、社会的に殺された人たちがたくさん出てくるシーンは胸が締めつけられました。
最初は主人公の自分勝手な悪意だったものが、やがて人々に伝染していく様はとても怖かったです。
<おわりに>
この本から学んだ教訓は、自分の中の欠乏感は、誰かが満たされているから生まれているわけではないということ。
一つしかない幸せを陣取り合戦のように奪い合いをしているのではない。
自分にも他の誰かにも幸せになる権利があるし、それは両立できることだ。
というか、それぞれが自分独自の幸せを見つけたらいいのであって、気に食わないからといって他人を攻撃するのは、絶対にやってはいけないことだと思う。
現実の自分も、不幸に浸かりきっていないか、誰かのせいにしていないか、幸せになる努力をしているか、色々考えさせられる物語でした。
余談ですが、読了後に1章を読み返すと、また違った読後感を感じることができました。