こんにちは。みゆきです。
今日はカツセマサヒコさんの「明け方の若者たち」を読んだ感想です。
<あらすじ>
「勝ち組飲み」という名前の飲み会で出会った、大学生の主人公と彼女。
彼女がケータイをなくしたことをきっかけに仲良くなり、お付き合いを始めて3年以上が経った。
社会人になり数年が過ぎ、彼女とは次第に疎遠になっていた。
そこからまたしばらくしてから、きちんと別れ話をして二人は別れた。
もともと彼女は既婚者で、彼女の夫が海外駐在から戻ってくるまでの期限付きの恋愛だった。出会った当初から主人公も知っていた。
だからこそ、深くハマらないように気をつけていた。
それでも一つの恋が終わる頃には、主人公の中でとても大きな存在になっていた彼女だった。
会社を休んで引き込もるほどに落ち込みながらも、親友たちに慰めてもらったり、時間が少しずつ彼女を忘れさせてくれたことで、徐々に立ち直っていく主人公。
別れから約1年後、主人公は学生時代を過ごした街を歩き、彼女との思い出に浸る。
出会った日と同じようなシチュエーションで置かれていた缶のハイボールを見かけて、写真を撮ろうとする。
いつの間にかケータイをなくしたことに気がついた主人公であった。
<心に残ったポイント3つ>
①「猫」を流しながら読みたい
映像化された作品で、主人公は北村匠海さんが演じています。
そんな主人公が失恋する物語ですので、「猫」という曲が似合わないわけがありません。
曲の歌詞にも、物語の本文にも、失恋した彼の描写がふんだんに散りばめられています。
別れたあとも彼女のことが大好きで大好きで仕方ない主人公に、感情移入できること間違いなしです。
②いい意味でありふれた描写
学生時代も社会に出て数年の描写も、似たようなシチュエーションや同じような気分になったことあるなと思えるところがたくさんあった物語でした。
一人の人を大好きになって、いつの間にか沼にはまったかのように恋人一色に染まってしまうところや、社会人になりたてで自分の無力感に自信ををどんどん失っていくシーン、同期のキャリアチェンジに動揺してしまうところなど、私にも身に覚えがあるところがたくさんありました。
主人公の他にも、彼女や主人公の親友の尚人の言動にも共感するところがあったり、自分の物語、もしくは自分の身近で起きていたんじゃないかなと妄想を掻き立てる物語でした。
主人公たちの年代の頃の自分と重ねて楽しむ他に、現在の自分からの目線でアドバイスしたくなるシーンもあったりして、いろんな方面から自分に重ねて読むことができる物語でした。
③尚人かっこいい
主人公の親友の尚人がとても魅力的な人物でした。
どこにでもいそうな彼ですが、失恋した主人公を慰めるシーンで登場する彼はとてもかっこいいです。
発狂寸前まで落ち込んでいた主人公を慰めるために、失恋の辛いところをロジカルに説明するくだりや、色々と名言を誕生させて主人公を励ましていくところは、とても頼もしいです。
主人公、いい友人に恵まれたなと思わずにはいられませんでした。
そして、失恋をきっかけに自分をブラッシュアップしようとする思考は男女共通なのだとわかって、そこも面白かったです。
<おわりに>
主人公たちと似たような青春を過ごしたり、見聞きしてきた人って多くいそうな気がします。
彼女がケータイをなくしたことで、主人公の中で始まった物語が、今度は彼がケータイをなくすことで完結を迎える。失恋したあともずっと引きずっていた彼女への思いが、ここでやっと成仏したのかなと思います。