こんにちは。みゆきです。
今回読んだのは、日本沈没 第二部(上) 小松左京+谷甲州です。
日本沈没に第二部があるのを知らなくて、読み始めてから続き物であることに気が付きました。
まあ。。第一部はドラマで見たし、なんとかなるかなと思い読み進めました。
実際、充分に面白かったです。
でもきっと、第一部が読みたい熱は近いうちに発症すると思います。
〈あらすじ〉
日本が沈没してから、25年後の世界。
かつて日本があった海域は航行が禁止されているが、不審な船や飛行隊が確認されている。
25年前の有事を偲ぶ慰霊祭の最中にも不審な船が近づいてきた。
現地での慰霊祭の様子や海底に沈んだかつての日本の風景の映像などが、全世界各地の会場にライブ配信されている中で、撮影を行っていた船は威嚇射撃を受けた。
政府主催のプロジェクトは、かつての日本があった海域にメガフロートの建築を計画している。100万人が収容できる規模だ。
各国に日本の領有権を主張する目的もある。
世界各地に散らばった日本人は、それぞれの場所で暮らしている。
有事の際のことを覚えていない、知らない人間もだいぶ増えた。
入植後に現地で生まれ、国籍を2つ持つ者。東南アジアに入植以来、土地開発に携わってきた者。現地の人間に積極的に技術を教えて、日本人と現地の人間の共生を目指す者。
そんな中、カザフスタンでの日本人排斥が確認された。
現地の人間を蔑ろにするような日本人の行動がきっかけだった。
〈心に残ったポイント3つ〉
①懐かしい景色を前に繰り広げられる日本人らしさ
冒頭の慰霊祭で生中継された、海底の景色を目にしたときの2つの日本人らしい表情が印象的でした。
1つ目は、参加者の当時を懐かしむ感情。
正確な故郷ではなくても日本の原風景に自分の記憶を重ねて、かつての当たり前だった生活を思い出しているところ。
海外旅行の帰りですら、成田空港が近づく機内から地上の景色が見えると、ちょっとグッときますもんね。
故郷を失った人間が海底に残るかつての景色を見たら、想像を絶するほど懐かしさがこみ上げてくると思います。
2つ目は、ほぼぶっつけ本番で海底の映像撮影に挑んだ船員さんたちの表情です。
懐かしさよりも、プロジェクトが無事に成功したことに感情が動く描写があります。
もしかしたら、有事の際のことを知らない世代の方が多かった設定なのかもしれませんが、一致団結でプロジェクトを成功に導いたことに大きな喜びを感じるところも、とても日本人らしい描写だと思いました。
②「日本人をユダヤ人にしてはいけない」
作喜(たつき)さんという登場人物の言葉です。
1つの民族が優遇されることで、他の民族から反感を買った結果、迫害につながることを防ぎたいという意味に私は捉えました。
日本人居住区と現地の村落部の生活水準の差が犯罪を招いている現状から、現地の人間に技術指導をしたり、経済活動に参加してもらい、生活水準を高めていく。
共生。テロを防ぐという側面。貧困から救う。さまざまな思いが詰まった活動を表していて、とても心に響きました。
③メガフロートが大きすぎる
メガフロート、作中では「浮体式構造物」という言い方もされています。
「浮体式構造物」という字面だけ見たら、大きくても1,000人が乗れる程度のものかと思いましたが、なんと100万人が乗ることを想像しています。
ウィキペディアで調べたところ、千葉市、世田谷区、北九州市などがすっぽり入るサイズです。まあまあな大きさの島を人工で造るイメージなのでしょうか。
上巻では計画段階で終わったので、下巻でどのように構築されるのか楽しみです。
様々な人間の視点でいろいろな場面が描かれていて飽きずに楽しむことができましたが、終盤にカザフスタンでの日本人排斥の痕跡が描かれています。これは、カザフスタンに限らず世界的に起きていることになっています。
日本人だけで集まってしまい物事が悪い方向に向かっていったのは、言語も一因な気がします。
現実でも、英語の習得に難しいイメージを持たれている方が多いと思いますが、英語に限らず多種の外国語を習得することは、多くの日本人にとってハードルが高いのかもしれません。異国の地で日本人のコミュニティに属していたら、日本語でコミュニケーションが取れますし、なおさら現地の言葉を学ぶのは難しくなりそうです。
この場面のおかげで、上巻の読了後はちょっと寒気を覚えました。
「日本沈没」の第一部は国土が沈みゆく物語でしたが、第二部はもしかしたら日本人という民族が消えゆく物語なのではないだろうか。
領有権を主張する以外に、世界各国で排斥されている日本人を救うためという理由でも、政府はメガフロートを構築しようとしているのだとしたら、辻褄が合ってしまう気がします。
生まれ育った故郷を失うことは、自分を組成している何かを失ってしまう気持ちになりそうですが、自分と同じ民族が消えようとしているのも、かなりの喪失感があります。
できることなら、なるべく多くの人種にとって幸せな結末を迎えてほしいと思いながら、下巻に進みます。